高校 ウクライナ支援のベンチャー企業副社長に就任

2022.3.17

高校3年生の中井咲希さんは、大阪市にあるベンチャー企業「ネクストエージ」の副社長に就任し、ウクライナ支援事業に取り組んでいます。今回はその活動内容や経緯について、立命館学園広報課の名和さんに取材していただきました。


きっかけはインパクトゼミ。IT活用し、ウクライナ支援

 大阪市のベンチャー企業「ネクストエージ」が、ロシアの軍事侵攻で避難しているウクライナ人向けに、パソコンとネット環境があればできる仕事を紹介し、支援する取り組みを始めている。このプロジェクトの中心人物は、立命館守山高校3年の中井咲希さん。
 この春から、立命館大学経営学部に進学する中井さんに、立命館守山高校で培ったマインドや今後の取り組みについて聞いた。

■きっかけはSNS。自分たちの活動を発信することで新しい可能性が生まれる
 ネクストエージは、2021年4月に創業した、国連が設定する「持続可能な開発目標」(SDGs)達成を推進する企画会社だ。中井さんは、ネクストエージが新たに立ち上げたメタバースのデザイン設計事業「Grape(グレープ)」の立ち上げに伴い、副社長に抜擢された。
 「もともと、立命館守山のユネスコ委員会がきっかけでスタートしたカラフルというチームで、メタバースに関するサービス『グローバドール』をさまざまなビジネスコンテストで発表していました。自分たちの活動は、活動記録としてFacebookに残していたのですが、それをご覧になられたネクストエージの方からお声かけいただいたのがきっかけで、ネクストエージに入ることになりました。ちょうど、ネクストエージが2022年3月から、メタバースに関連した事業でウクライナを支援する話があったようで、私としてはこれまでの経験をいかせるチャンスだと思って引き受けました」(中井さん。以下、同じ)
 ネクストエージが中井さんに注目するきっかけとなった「グローバドール」プロジェクトは、「びわ湖ピッチ2021」最優秀賞をはじめ、「ソーシャル・イノベーション・チャレンジ2021」日本大会出場、「第9回高校生ビジネスプラン・グランプリ」セミファイナリストに選出されるなど、若者向けの起業家教育プログラムでも高い評価を受けていた。
 「グローバドールは、多様な人種の人形をメタバース(仮想空間)上に展開し、価値観の形成に深くかかわる幼少期から、相手の視点に立って多様性を受け入れられるようになるためのグローバル教育を行うサービスです。2021年の夏、メタバースという言葉を耳にする機会が増えて『なんか面白そう』と思い、友人らとメタバースで解決できる社会課題を検討し、実際にアイデアを形にしていきました。メタバースの概念自体は昔からあるものですが、私たちはゲームの世界(現実とは違う空間)で、遠く離れた海外の人と仲よくなる経験も当たり前。メタバースも同じかなと思ったら自然と興味が向いて取り組むようになりました」

■ターニングポイントは“インパクトゼミ”
 立命館守山高校が進める探究授業をきっかけに、自発的にコンテストやピッチイベントに応募し、自らのアイデアを社会に発信してきた中井さん。高校生活でターニングポイントにあげてくれたのはユネスコ委員会やSci-Tech部を含めた“インパクトゼミ”の活動だった。
 「中学(立命館守山)の時から、まわりからは英語ができるイメージがあったと思います。中学3年の時に英検準一級を取得したので、わりと海外系のイメージかなと。だけど自分の中では、英語はできるに越したことはないけど、英語が喋れるだけの人では終わりたくありませんでした。高校1年で半年間カナダに留学を経験したことで、英語を話すのはあくまでも手段であって、何を話すのかが大事だとあらためて身に染みて。そんなことを考えていたタイミングで、たまたま友達にインパクトゼミに誘われました。モヤモヤしていた時だったので、思い切ってチャレンジすると決心したことを覚えています」
 「起業する」というイメージは当初思っていなかったそうですが、インパクトゼミの活動を通じてさまざまな社会人、大学生の方と話すこと、また、チームのリーダーになって活動することで視野が広がったそうです。
 「最初は起業したいなとかは思っていませんでしたが、誘われて入ってやってみたら以外と楽しくて、気づけば行動に移している自分がいました。インパクトゼミの活動を通していろんな人との出会いがありましたし、普通に高校生活を送っていたら接することがない大学生や社会人の方と話す経験ができました。3年生でチームをまとめるリーダーになり、悩むことも多かったですが、決断する勇気の大切さを学び、振り返るとインパクトゼミは青春のような感じですね」

■ウクライナ避難民に日本から『仕事を発注』…自分たちで行動し、挑戦したい
 インパクトゼミをはじめとしたさまざまな活動を通して行動する大切さを学んだ中井さんは現在、ロシアによるウクライナへの侵攻によるウクライナ避難民への「仕事」を支援するサポートに取り組んでいる。「PC1台からの勇者プロジェクトfor U」と銘打った取り組みについて、中井さんは次のように語ってくれた。
 「ウクライナで戦争が起こり、(避難民は)お仕事をどうしようとか、生活の不安を覚えることが考えらました。そんな折、ウクライナはITに強い国だと知り、メタバース事業との親和性を感じました。PC1台とデザインの才能があれば誰でも取り組める利点をいかし、日本に住んでおられるウクライナの起業家とタッグを組んで、避難民となり職を失ったクリエイターを探し、お仕事をして活躍していただくスキームを(ネクストエージ)が構築し、私が事業を運営する役割を担いました。For Uというのは、『あなた』と『ウクライナ』を意味しています」
 「活動にあたっては、日本在住のウクライナ人に会わせていただき、本プロジェクトが本当にウクライナ避難民に喜ばれるのかも確認しました。今の心境を聞くと『疲れています』の一言や、『一緒に泣くよりも一緒に笑いたい』という言葉に心が凄く響いたことを覚えています。それまではウクライナのことはニュースで多少の情報として知っていたぐらいで、自分事として捉えていなかったのですが、他人事じゃないという気持ちと、活動への責任感を強く抱きました。まずは半年間、一人でも多くの方にお仕事を依頼できるよう精力的に活動していきます」

■2022年4月からは、立命館大学経営学部へ
 4月からは、立命館大学経営学部国際経営学科へ進学する中井さん。大学での学びについて
「経営学部の学びは社会で実践できる学問だと思っています。今行っているプロジェクトにも参考になることも多いと思うので、学んだことを会社にも取り入れていきつつ、さらに成長していきたいです」と力強く語ってくれた。

2022年3月16日 Yahooニュース掲載
避難者にIT活用の仕事支援を ウクライナ支援のプロジェクト