高3理系講演会「月にくらす時代のみなさんへ」を開催しました(立命大・佐伯教授)

2023.6.12

6月7日(水)、高校3年理系生徒のための特別講演会を開催しました。
今回の講演会では、立命館大学・総合科学技術研究機構の佐伯和人教授より「月にくらす時代のみなさんへ」というタイトルで、「なぜ月面の研究をするのか」や「これからの月面での研究の方向性」などについてお話していただきました。

最初に、「なぜ宇宙探査を目指すのか」について説明があり、その中では「このまま地球に住み続けると人類は滅びる」というショッキングな話題から、「生命と宇宙の起源を知る」という科学的探究心の話、「宇宙人に会うため」のようなロマンの話まで、宇宙探査に関する多方面にわたる話題がありました。

次に、「月はどんな場所か」についての現時点で分かっていることの解説がありました。月面では「重力は地球の6分の1、温度は-170~120℃、地球の50~250倍の放射線」の悪条件の中で「隕石が猛スピードで音もなく落ちてくる」という過酷な環境であることが紹介されました。その中で「月で水1リットルを買うとしたらいくらだと思いますか?」という質問がありました。答えは「約1億円」です。水の値段が高いのではなく、地球から1kgの重さの物を持っていく輸送費が高いのです。酸素も燃料も1kgだけ運ぶには1億円かかります。「だとしたら、月にある岩石や極地方にあるとされる氷から、水や酸素や燃料を製造できる技術にある程度のお金をかけても意味がありますよね」という言葉に説得力がありました。

最後に、「これから2040年代には月で常時1000人くらいの人間が暮らしていて、1年間で約1万人の人が月を訪れると言われています。今日の生徒の中にも何人かは月に行くかもしれません。」との話があり、1997年に木星へ向けて打ち上げられたボイジャー1号(現在は太陽系外へ飛行中)に搭載されたメッセージが紹介されました。その中には『我々はいつの日にか、現在直面している課題を解消し、銀河文明の一員となることを期待しています』と書かれています。高校生にとって興味のある内容の講演でした。