「民主主義って何?」と問われたら、どう答えますか?
身近な具体例として思い浮かぶ「選挙」や「多数決」であれば「制度」「仕組み」になりますが、「思想」「理念」とも言えそうです……。

 

2025年の年明け早々、箭内副校長から「先日知り合ったデジタル民主主義を実践する若手起業家が元旦の新聞で紹介されていました!しかも一面ですよ、一面!」と、やや興奮気味の報告がありました。それは次のような経緯でした。

昨年11月、立命館大学BKCキャンパスで開催された「一般社団法人Code for Japan(コード・フォー・ジャパン)」(IT技術を活用した地域課題の解決をめざす非営利団体)主催のイベントにおいて、本校教員が「デジタル保健室」「生成AIによる英語学習」の実践を分科会で発表しました。その際、箭内副校長は他の分科会にも顔を出し、ある若手起業家と名刺を交換しました。その人が、元旦の新聞一面に載った、というわけです。

その若手起業家とは、設立5年のスタートアップ企業「Liquitous(リキタス)」代表取締役CEOを務める栗本拓幸さんです。現在25歳。大学在学中、20歳で起業した方です。

Liquitousの事業内容は、「Liqlid(リクリッド)」というオンラインプラットフォームを用いた、自治体行政と市民参画・共創の仕組みづくりの推進です。具体的には、「自治体が設定したテーマに対し、市民がさまざまな意見やアイデアを投稿する。市民は他の人の投稿を見ることができ、対話や議論につながっていく。投票を行う場合もある。そうやって合意形成された民意に基づいた施策の実行が自治体には可能になる」(1)という仕組みです。現在、60自治体が導入しており、全国から注目を集めています。

元旦の毎日新聞一面では、次のように紹介されています。

近代の民主主義は、代表者となる政治家を選んで政治を委託する「間接民主主義」を主流とする。膨大な国民の意見を一つ一つ拾い、それをまとめ、施策に反映するのは不可能。アナログな手法しか使えない時代には、それが常識だった。
リクリッドは、その壁を突き破り、「直接民主主義」を実現するツール。「DX(デジタルトランスフォーメーション)で市民参加を実現したい」。それが栗本さんの志だ。〔中略〕

直接民主主義に力を入れる栗本さんだが、間接民主主義を否定しているわけではない。あくまでも「補完」という位置づけだ。「選挙以外の市民参加の方法を考えたいということ。政治家も市民の問題意識に直接触れることができれば、納得できる答えを生み出す役割を今よりも果たせる可能性がある」。民主主義のアップグレードを目指して――。その挑戦は続く。(1)

DXを活用した民主主義の実現に挑戦する栗本さんは、まさに希望を生みだすGame Changerに他なりません。

その後、箭内副校長が栗本さんに連絡を取ったところ、ご自身が高校時代に生徒会長を務め、学校における民主主義の実践が現在の問題意識の出発点であったという事情を伺いました。この間、本校では生徒会が中心となってルールメイキングの活動を行ってきている経緯があります。そこで、高校生徒会のDXアドバイザーとしてのご協力をお願いしたところ、ご快諾いただくことができました。早速ご来校いただき、高校生徒会五役メンバーと懇談し、体育祭に関する生徒からのアンケート集約でLiqlidの仕組みを使わせていただくことができ、その効果に生徒たちは感銘を受けていました(2)。今後、栗本さんの協力をいただきながら、全校生徒の声を可視化するとともに、生徒が学校運営に参画することを通じて、学校におけるデジタルを活用した民主主義の実践をすすめていきたいと考えています。

 

栗本さんと生徒たちの懇談を聞いていて、こう思い至りました。
民主主義とは、「制度」や「仕組み」というレベルを超えた、市民参画の社会や生徒参画の学校をつくりたいという、「熱意(パッション)」あるいは「信念」そのものなのではないか、と。

 

注釈

(1) 毎日新聞「デジタルで問う『真の民意』『1人1票』方式すら疑う」(2025年1月1日朝刊)

(2) Liquitousサイト「弊社CEO・栗本が、立命館守山中学校・高等学校の『生徒会DXアドバイザー』を受嘱」https://liquitous.com/news/article/2025050802