ルールは何のためにあるのか
─高校体育祭に見た生徒自治の力─
「今回の体育祭では、進行が想定通りにいかず、時間が押してしまったことをはじめ、運営上の失敗がたくさんありましたが、一番良かったのは生徒が当事者になれたことです。そして、先生方には、生徒の挑戦を温かく見守り、僕たちが挑戦する環境を作っていただいたことを感謝しています。」
5月16日に開催された高校体育祭の実行委員長を務めた渡邉幸大朗さん(高校3年)が、振り返りの会議で述べた言葉です。
今回の高校体育祭は、生徒部主任が「今までで一番、自分を含め教員が動かなかった体育祭」としみじみ語るほど、企画、準備、当日の運営にわたって生徒自身の力、生徒自治の力が発揮された体育祭でした。
とりわけ象徴的だったのは、体育祭のルールをめぐって生徒同士が話し合った次のエピソードです。
今回、生徒会・体育祭実行委員会では、次の「最重要項目」の観点から体育祭運営のルールを検討したそうです。
3つの最重要項目 ①アイリスグラウンドでの落下物による怪我防止の観点からルールを設定する ②競技中の怪我防止の観点からルールを設定する ③体育祭での競技・応援を楽しむ、肖像権・盗撮被害等の観点からルールを設定する |
上記項目を根拠に、「落ちる可能性のあるもの(ポンポン、ラインストーン、モールなど)」を使用不可、「ヘアピン」や「カチューシャなど怪我につながる可能性があるもの」を装着不可とし、競技中は「ハチマキ」「リストバンド」のみを使用可とする方向で議論をすすめていました。
渡邉実行委員長は語ります。
「ルールの話し合いでは、背景や理由をかなり強調する提案をしました。その中で、『団アピールを盛り上げるために、ポンポンは必要だ』という意見が出て、議論になりました。僕が『切れ端がグラウンドに落ちると、回収できひんし、授業やクラブ活動に迷惑がかかるから、不可にしたい』ことを言ったら、ある生徒が『じゃあ「落ちないポンポン」やったらいいの?』と発言し、後日、『落ちないポンポン使用』の提案書が提出され、検討の結果、許可することになりました。話し合いを通じて、ルールは何のためにあるのかが共有されて、むっちゃ嬉しかったです。」
なお、当日の団アピールでは、ポンポンが効果的に使われ、体育祭を華やかに盛り上げることに一役買ったことは言うまでもありません。
渡邊実行委員長は続けます。
「開会式の挨拶でもしゃべったんですけど、僕は他者の自由を侵害しない究極の自由っていうのを考えてきました。僕の中では、ルールって、いろんな人がいる中でのルールやから、ある程度厳しいラインで取られている。じゃあ僕らの学校のこのコミュニティの中でのルールを考えた時には、ルールのレベルって変わってきますよね。あなたはどこまで行けるの?あなたはここは共有できるの?ここは僕はできないんだけどっていう感じで、ラインを引いていくのがルールづくりの議論じゃないかと。そのためには、対話しながら、リスペクトの精神、信頼が一番重要だと思いました。」
今回の高校体育祭は、イベントとしての完成度を高める課題を残したのは確かです。しかし、それ以上に、生徒が自分の頭で考え、仲間と話し合い、悩みながら、問題を解決していく、貴重で価値ある機会になりました。
こうした経験がリツモリの伝統として受け継がれていくことを期待しています。