「平和とは、ただ戦争がない状態を意味するだけではありません。真の平和とは、すべての人々が尊厳を持って生活できる社会をつくることです。貧困や差別、環境問題が解決され、誰もが安心して暮らせる社会が平和であると言えます。」

これは、8月6日朝、広島への原爆投下時刻に守山市民運動公園内「平和の広場」にて開催された守山市主催「平和を誓うつどい」において、本校中学3年本郷莉子さんが語った「平和の誓い」の一節です。本郷さんは、「つどい」での来賓挨拶に続いて、守山市で学ぶ小中学生を代表してスピーチに臨みました。

守山市は、1988年に「のどかな田園都市守山」平和都市宣言(1)を行い、核兵器のない平和な世界の実現に向けた平和事業をすすめてきました。具体的には、上記「平和の広場」に「平和の祈り像」「広島被爆石」「長崎被爆二世の柿の木」のモニュメントを整備し、毎年8月6日の広島原爆忌に「平和を誓うつどい」を開催してきました(2)。また、守山市は2011年から平和首長会議に加盟しています(3)。

さらに、今回のつどいでは、新たなモニュメントとして「戦後80年平和持続祈念碑」の除幕が行われました。この祈念碑には、日清戦争以降に徴兵や空襲で犠牲となった守山市出身者1,035名の氏名が刻まれています。太平洋戦争では日本全土が米軍による空襲を受けましたが、ここ守山市においても「終戦間近の昭和20年7月30日に、守山駅においてアメリカ軍による列車への機銃掃射が行われ、多くの方が被害に遭われました」(森中高史守山市長挨拶)とのことです。

私自身、「平和を誓うつどい」に初めて出席し、守山市が自治体として様々な平和の事業に力を入れていることを知り、今さらながらではありますが、本校が守山市に所在する学校であることを誇らしく感じた次第です。

 

さて、冒頭の本郷さんが指摘する平和の定義「すべての人々が尊厳を持って生活できる社会をつくること」「貧困や差別、環境問題が解決され、誰もが安心して暮らせる社会」には、重要なポイントがあります。

この考え方は、SDGsの目標16「平和と公正をべての人に」の内容に通じています。目標16は、「16.1 あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。」「16.2 子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。」をはじめとした12項目のターゲットで構成されており、私たちの日常生活と深く関わりがあります。日本も例外ではありません。

つまり、平和とは私たちの生活からかけ離れた、別世界の抽象的なものではなく、日々の生活の中で、私たちの積極的行動によって創造するものであると言えます。日本の中学生・高校生に必要なことは、世界の歴史や現状を学ぶことと、身近なところから小さな行動を起こすことです。本郷さんのスピーチ後半は、そのことをとても説得的に表現していました。それを最後に紹介します。

「私たちの力では、世界で起きている戦争を止めることはできません。しかし、いじめや陰口などの小さな戦争は止めることができます。誰かに自分が言われたら、誰かに嫌なことを言ってしまったことがあるなら、毎日少し自分の言動に気をつける。〔中略〕こんな小さな一歩が、平和への一歩につながるのです。平和のためには、それぞれの価値観で違いを認め合う。つまり、多様性を受け入れて、寛容性に基づき、対話を通して、互いの意思を尊重し合うことが求められるのではないでしょうか。」

 

注釈

(1) 守山市サイト「『のどかな田園都市守山』平和都市宣言
https://www.city.moriyama.lg.jp/kanko_event_manabi/jinken/1002788/1002945.html

(2) 守山市サイト「平和の広場とモニュメント」
https://www.city.moriyama.lg.jp/kanko_event_manabi/jinken/1002788/1002944.html

(3) 守山市サイト「平和首長会議に加盟しています」
https://www.city.moriyama.lg.jp/kanko_event_manabi/jinken/1002788/1002943.html