「西暦2050年までに、サッカーの世界チャンピオンチームに勝てる、自律移動のヒューマノイドロボットのチームを作る」(1)

ロボカップ関係者がめざす「夢」です。 今年も、この「夢」に向かって、高校サイテック部所属のチーム「AIR」がブラジルで開催された世界大会に日本代表として出場し、ロボカップジュニア「サッカーライトウェイト」部門で世界総合第3位を勝ち取りました。

先日、メンバーである、内田朝陽さん、狩野浩甫さん、中沢謙吾さん、松井颯良さん(全員高校3年)が校長室に報告に来てくれました。以下、インタビュー形式で紹介します。

 

Q:今回、世界大会をめざしたきっかけは?

AIR:昨年、同学年チームの「Edge」が同じライトウェイト部門で優勝したことが、かなりの刺激になりました。「負けていられない」という感じです。しかも、大学生を含めて本校に関係する2チームが世界大会の各部門で優勝したので、自分たちも頑張りました。

Q:世界大会前の練習試合では、「Edge」に勝利したそうですね。「Edge」メンバーが「僕たちは越えられた」と言っていました。

AIR:少し前までは負けていましたが、今回の世界大会前のエキシビジョンでは、なんとか勝つことができました。それでも、ディフェンスの機能や、常に平均値を出す力は「Edge」の方が高く、試合には勝ちましたが、まだまだ負けている部分もあると感じました。3対2だったので、すごく拮抗していましたね。

Q:今回の世界大会を振り返って、一番思うことは?

AIR:日本の環境との違いへの対応に苦労しました。具体的には、コートがツルツルで日本より滑るため、アタッカーの速度設定を下げたり、回り込み挙動を調整したりしました。また、周囲を認識するカメラが強光で色誤認が発生したため、日本では未装着だった視界制限板を、向こうに行ってから取り付け、上方光の遮蔽と視野制限を行いました。こうした対策を実施したものの、完璧ではありませんでした。1位のカナダチームは、自国のコートとほぼ変わらないような動きができていたようです。結局、環境の変化に対応しきれなかったことが上位チームとの差だったのかなと考えています。

Q:ロボカップは競技力だけでなく、自分たちの技術を英語でプレゼンし、質疑応答することも評価対象になると聞いています。

AIR:自分(内田)がポスターの前で説明し、質疑応答にも対応しました。小学校時代アメリカに住んでいたこともあり、英語は得意な方でした。最終評価としては、競技で3位、プレゼンも3位で、総合3位となった次第です。

Q:ロボット製作をやってきたので、やはり進路は理工系ですか?

AIR:2人が理工学部、2人が情報理工学部への進学を希望しています。情報理工のうち1人はISSEコース(授業が英語のみのコース)です。

Q:最後に、各自の今後の目標を教えて下さい。

A:自分は、将来はロボットを一から設計して世の中に出す仕事をしていきたいと思っているので、ロボティクス学科で学びながら、将来生活に役立つロボット開発をめざしたいと思います。

B:僕は大学進学後もロボカップジュニアに関わり続けたいと思っています。将来は、自分の作ったプログラムで世の中のシステムや交通に関わる課題を改革していきたいです。

C:僕はまだ将来は決まってないんですけど、ブラジルで他国のチームと交流した時に、いろんな意見交換をするのが楽しかったので、大学では英語で勉強し、世界の人と交流する機会を増やしたいです。

D:僕はプログラミング系というより、ものづくり系が将来の夢です。そのために理工学部で勉強し、この経験を活かして頑張っていきたいです。

 

彼らが製作するロボットは、既製品はカメラレンズとモーター部分のみで、本体からプログラミングまで、すべてオリジナル、手作りです。また、ロボットや部品を扱う企業にメールや電話で協賛を呼びかけ、自分たちで資金を集める活動もやってきたそうです。これこそ、「超」探究です。

話を聞きながら、世界優勝こそ逃したものの、彼らが取り組んできた活動には世界一の価値があることを、私は感じていました。この中から、将来世界を変えるGame Changerが誕生する「夢」を思い描きながら。

 

注釈

(1) ロボカップ日本委員会サイト https://www.robocup.or.jp/robocup/