「食わず嫌い」も“くるり”と変わる
─京都音楽博覧会体験記─
─京都音楽博覧会体験記─
“The proof of the pudding is in the eating.”(プディングの味は食べてみなければわからない)
これは、イギリスのことわざで、日本では「論より証拠」に該当します。体験して初めてその良さがわかるという意味になります。
10月12日午後、私はJR嵯峨野線の梅小路京都西駅を下車し、京都梅小路公園を歩いていました。20数年前、JR線を挟んで反対側のエリアに住んでいたことがあったため、梅小路蒸気機関車館(現在は京都鉄道博物館)からたまに聞こえた蒸気機関車の汽笛が懐かしく思い出されます。人混みをかき分け数分歩くと、公園芝生広場で開催中の京都音楽博覧会2025の入口に到着。待ち合わせしていた知人2人を見つけます。
京都音楽博覧会、通称「音博(おんぱく)」とは、立命館大学卒のミュージシャンくるりが主催し、今年で19回目となる野外音楽フェスティバルです。動機は、くるり好きの知人からイベントを教えてもらい、前から少し気になっていたくるりを聞いてみようかという個人的なものでしたが、実はあるプロジェクトのための視察も兼ねていました(内容はまだ秘密)。例年1万数千人の参加と聞いていた通り、入場すると、公園の芝生広場は超満員。立錐の余地もありません。
この音博は、4年前から持続可能なイベントとして、社会課題の解決に取り組んでいることが大きな特徴です。
| 2022年から始動し、3年目となった「資源が“くるり”プロジェクト」。地域と連携した新たな環境活動として、くるり主催の音楽イベント『京都音楽博覧会(以下、京都音博)』にて、生ごみとして捨てられてしまう食べ残しや余った食材を“くるり”と完熟たい肥という資源に変える取り組みを続けています。 今回も、たくさんの方々の協力のおかげで『京都音博』由来の完熟たい肥が出来上がりました。そして、2025 年3 月24 日(月)に〈梅小路公園〉にて「完熟たい肥お引渡し会」を実施。昨年も参加してくれた小学生をはじめ約40名が集まりました。(1) |
現在では、古着を回収し必要な人へとつないだり、本来なら捨てられる食材を使ったお菓子を販売したり、サステナブルな事業者が共同ブースを出展する「資源が“くるり”プロジェクト」へと進化しています。この活動が地域から評価され、「第22回京都市環境賞 特別賞」を受賞。まさに、地元から愛されるイベントであることを実感できました。
先ほど述べたとおり、私個人はくるりの名前を知っている程度で、あまり特徴がわからないグループのイメージしかなく、「食わず嫌い」の状態にありました。知っている曲は、ただ一曲、以前立命館大学制作のイメージ動画のBGMに使われていた「奇跡」のみでした。
しかし、今回、事前学習として通勤時に何曲かを聞いているうちに、音楽ジャンルの守備範囲が非常に広いこと、歌詞が比較的難解で想像力がかき立てられること等が徐々にわかってきました。そして、当日は同じ空間で彼らの音楽を体験し、すっかり魅了されている自分に気付きました。
そして、最後を飾る曲は……。
なんと「奇跡」でした。
| 退屈な毎日も 当然のように過ぎてゆく 気づかないような隙間に咲いた花 来年も会いましょう(2) |
来年は京都音博20周年。本校も開校20周年。
不思議な縁を感じました。
注釈
(1) 京都音楽博覧会「資源が“くるり”プロジェクト」活動リポート
https://kyotoonpaku.net/2025/assets/images/pdf/circular-economy_2025.pdf
(2) 「奇跡」(作詩・作曲岸田繁)の一節。