先日、漫画『宇宙兄弟』の作者小山宙哉氏が所属する株式会社コルク様より、『宇宙兄弟』全45巻を本校に贈呈いただくこととなり、その贈呈式を執り行いました。

株式会社コルクといえば、他にも、漫画「ドラゴン桜」の作者である三田紀房氏や、芥川賞作家の平野啓一郎氏をはじめとするクリエイターが所属する会社です。

経緯は次の通りです。

立命館守山高等学校第一期卒業生に仲山優姫さん(立命館大学卒)という方がいて、株式会社コルクのエージェント事業部のスタッフとして小山宙哉氏の編集担当をされています。

一方、立命館大学は現在「人類の生存圏の維持と拡大に貢献する」ことをめざす宇宙地球探査研究センター(ESEC:イーセック)を立ち上げ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が公募する宇宙戦略基金事業に2年連続で採択されるなど、次世代研究をすすめています(本校のコミュニティセンター前にある天体望遠鏡もESECセンター長の佐伯和人教授から贈呈いただきました)。

今年に入り、母校を訪問された仲山さんが、そうした大学の動向や本校の天体望遠鏡があることを知り、会社に提案し、『宇宙兄弟』贈呈が実現した、というわけです。

あらためて、株式会社コルク様に感謝申し上げます。

 

さて、当日は約20名の生徒が参加し、仲山さんによる「漫画ワークショップ」、『宇宙兄弟』贈呈式、天体観測会と盛りだくさんな放課後となりました。天体観測会では、天体望遠鏡アドバイザーの森田光治先生(元本校教諭)による「土星観測のポイント」のレクチャーを受けた後、土星の輪や二つの衛星を観測。私も天体望遠鏡で土星をほぼ真横から観察することができ、宇宙の不思議を実感しました。

実は、恥ずかしながら、私は『宇宙兄弟』を全く読んでいませんが、たまたま株式会社コルク代表取締役社長の佐渡島庸平氏の著書(1)は拝読していました。

佐渡島氏は次のように述べています。

人は、その人だけ単独で、個人として存在しているのではない。ドーナツの円の穴のように、その周りを取り囲む他者、場所との関係性の中に人はいる。

人の能力は関係の中で発揮され、人は関係に悩む。その人をその人らしくしているのは、その人の能力よりも、その人の関係だ。〔中略〕多くの物語は、次から次へと事件が起きる。エピソードを描いている。一方、僕が本当にいいと感じる物語は、人と人との関係を描いている。関係から、その人らしさを浮かび上がらせている。

『宇宙兄弟』という作品は、人間描写が優れている。物語の中で、主人公のムッタが優秀で、次々と押し寄せる難題を解決するのではない。周囲の人間との関係の中で、自分の能力、周囲の能力を引き出していくところがムッタの魅力なのだ。(2)

複数の他者とのつきあいを通じて、自分の中に複数の視点を形成することによって、人間は成長する。小説やマンガという物語を読み、登場人物を追体験することによって、私たちは、他者との関係性のつくり方を学ぶことができる──。そのことをあらためて教えられた次第です。

 

『宇宙兄弟』は、来年刊行される第46巻をもって完結するとのことです。私も、それまでに全45巻を読む決意を固めました。

 

注釈

(1) 佐渡島庸平『観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか』SBクリエイティブ、2021年。
(2) 前掲書。