“We are Space Brothers”
─漫画『宇宙兄弟』が教えてくれること─
─漫画『宇宙兄弟』が教えてくれること─
新年あけましておめでとうございます。
2026年は、立命館守山高等学校開校20周年の節目となる記念すべき年です。未来の「Game Changer」が育つ学校をめざして、今年は記念イベントの開催や様々な発信をしていく予定ですので、ご期待下さい。
さて、校長ブログ53で紹介したとおり、昨年11月、本校卒業生が編集者を務めているご縁で、漫画『宇宙兄弟』作者の小山宙哉氏が所属する株式会社コルク様より『宇宙兄弟』全45巻を本校図書室に贈呈いただきました。ブログにおいて私は全巻を読む決意を表明しましたが、それを実行すべく、昨年末電子書籍で全巻「大人買い」し、正月三が日を返上、約1週間で全45巻+α全428話を読破しました!
『宇宙兄弟』は、少年時代に宇宙にあこがれ夢中になっていた兄弟が、将来宇宙飛行士になることを誓い合う物語です。大人になり、弟ヒビトは夢を叶えてNASAの宇宙飛行士となり月面着陸をめざしますが、兄ムッタは31歳で無職に。人生に迷っていたムッタの元に、JAXA(宇宙航空研究開発機構)宇宙飛行士選抜試験の書類選考通過の知らせが届きます。仲間との出会い、厳しい試験・訓練、様々な困難を乗り越えながら、遠回りしてきたムッタが宇宙をめざして成長していく姿が描かれています。宇宙空間は一歩間違えたら死と隣り合わせの世界。様々な背景を背負った登場人物たちが、何度も命の危機に遭遇し、それをチームで徹底的に考察・検証・解決する物語に、私はたくさんの感動をもらいました。
私がこの作品から学んだメッセージは二つあります。
一つは「わくわくする気持ちが人生の原動力になる」ということです。
自動車会社をクビになったムッタは、ある日、ヒビトから電話で「19年前の録音テープを聴いてくれ」と言われます。そこには、子どもの頃の二人の声が残っていました。ヒビトが「俺は宇宙飛行士になって月に行く。ムッちゃんはどーすんだ?」と聞くと、ムッタは「俺は……、お前が月に行くんなら、俺は火星に行くよ!」と答えていたのです。その言葉を聞いた瞬間、ムッタの心に火がつきます。あの頃、わくわくしていた気持ちが再び湧き起こり、もう一度、宇宙飛行士をめざすことを決意します。
夢や目標は年齢や状況に関係なく、心がときめくことで再び力になります。勉強も同じで、「面白そう」「やってみたい」と思えることがあると、努力する力が湧いてきます。だから、みなさんもぜひ、かつて自分がわくわくしたことを思い出し、または今わくわくすることを見つけてほしい。最後に未来を切り開くのは、ときめく心を失わないことではないでしょうか。
そして、もう一つ重要なメッセージがあります。それは、国家の壁を越えた協働の大切さです。
『宇宙兄弟』では、日本、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ各国の実在する宇宙機関が、国境を越えて協力し合っています。異なる国籍、異なる文化背景を持つ宇宙飛行士たちが、命がけのミッションで互いを信頼し、尊重し合います。政治的な対立や国家間の利害を超えて、「人類の未来」という大きな目標に向かって協力する姿が描かれているのです。
しかし、正月早々、トランプ政権によるベネズエラへの軍事侵攻という、人類が長い時間をかけて構築してきた「法の支配」をかなぐり捨て、「力の支配」を世界に見せつける事態が発生しました。『宇宙兄弟』のような国境を越えた協働は、平和があってこそ成立します。宇宙をめざす夢も、地球上の争いの前には無力です。
“We are Space Brothers”
このメッセージには、「私たちは宇宙をめざす兄弟姉妹であり、共に未来を築く仲間である」という願いが込められています。国籍、人種、宗教、政治的立場の違いを超えて、人類として共通の夢を追い、平和な世界を守り続けること。それこそが、『宇宙兄弟』が私たちに伝えようとしているメッセージではないでしょうか。
今、中高生のみなさんにできることは、「学ぶ」ことです。今世界で起こっていること、社会の仕組み、歴史を知り、学び、問題解決の方法を考え、話し合うことです。また、立命館大学は宇宙地球探査研究センター(ESEC)を設置し、「人類の生存圏維持と拡大への貢献」をテーマに、国内トップレベルの宇宙研究に取り組んでいます(1)。宇宙に興味がある人は、是非ESECのサイトを覗いて下さい。
開校20周年を迎える今年、本校で学ぶみなさんが、未来の「Game Changer」として、「4つのリスペクト」とわくわくする心を持ち続け、現実の世界を知り、学びを深め、平和で持続可能な世界をつくる担い手となることを期待しています。
※1月8日始業式の校長講話に加筆しました。
注釈
(1) 立命館大学宇宙地球探査研究センター(ESEC)サイトを参照
https://esec.ritsumei.ac.jp