モロッコで始まる「TANKYU=探究」
─2校との教育交流連携協定締結─
─2校との教育交流連携協定締結─
現在、モロッコ王国のある高校で、「TANKYU」という名の授業が行われている──。
ことの始まりは、約1年前にさかのぼります。
本校共創探究科主任の田辺記子教諭が、GLの高大連携授業「グローバルAP」でサポートいただいている鳥山純子教授(立命館大学国際関係学部)から助言を受け、イスラム文化圏の高校との教育連携のアイデアを練り上げました。鳥山教授は、中東地域におけるジェンダーの問題や学校教育を研究する文化人類学者です。
検討の結果、鳥山教授のネットワークを活かし、モロッコ王国をフィールドとする教員研修を夏季休暇期間に実施する計画を立案しました。必要経費は、公益財団法人公文国際奨学財団が募集する「中学・高校国際教育関係教員短期海外派遣プログラム」への採用によって賄うこととし、生徒が探究コンテストに応募する上でのロールモデルになるべく挑戦したところ、見事採用され、教員2名分の必要経費を獲得することができました。
昨年8月、田辺主任と児玉教諭がモロッコ王国に赴き、現地の高校2校を訪問。本校の探究学習についてプレゼンしたところ、理事長・校長をはじめ先生方から非常に高い関心が示され、「一緒に探究学習を進めましょう」と意気投合しました。(なお、モロッコの公用語はアラビア語ですが、旧宗主国フランスの影響により日常的にはフランス語が話されています。当日はフランス語はわかるが英語がわからない職員の方もおられ、フランス語、英語、日本語が飛び交う国際色豊かなコミュニケーションだったそうです。)
教員2名の帰国後、モロッコ2校と本校とのオンラインを通じた生徒同士の交流が進展し、その中で両校から正式に教育交流連携協定を締結したいとの意向が示され、今回の来日および協定締結式の開催が実現したわけです(1)。
今回連携協定を締結した学校は、フェズ市にあるAl Assima(アル・アッシーマ)校と、サレ市にあるMohamed Benabdallah(ムハンマド・ベンアブドッラー)学園の2校で、いずれも私立校です。
私が感銘を受けたのは、両校の先生方の教育への熱い思いと、柔軟かつスピード感ある対応力でした。
私の知る限り、フランスでは、学校における学力テストは高校の定期試験から大学入試に至るまで記号による選択肢問題は一切なく、すべて論述式です。全員必履修の「哲学」授業があり、日常的に自分の意見を論述する高度なトレーニングが行われています。こうした教育システムの影響下にあるモロッコでは、従来の日本の受験教育のように知識の記憶に重点が置かれたレベルを超える教育が展開されていると思っていました。
ところが、Mohamed Benabdallah学園のDriss Benabdallah理事長は、「確かにフランスの教育にはそういう積極性がありますが、哲学とは言っても『机上の空論』に近いものです。その点、貴校の『TANKYU』は、生徒自身の興味関心から出発し、解決したい社会課題を深く考察することを通じて、学びがジブンゴトになっているところが素晴らしい」と語っていました。
また、Al Assima校は、本校教員が訪問した直後から「TANKYU」の準備を始め、9月の新学期から早速授業を開始。そのスピード感には脱帽しました。同校のKhalid Zouirchi教務主任は「モロッコの教育は、今まさに構造的な改革を遂げつつあり、その中でいかに質を上げていくかが問われています。リーダーになる能力があったとしても、それを発揮する機会がなければ花開きません。その意味でも、この『TANKYU』の授業には大きな可能性を感じます」と語っています。
今回の「TANKYU輸出プロジェクト」は、教員自身が挑戦する探究プロジェクトであり、それが国境を越えて学校教育に結実した実践と言えます。私たちの予想を超えて、「TANKYU」の可能性に共感し、早速教育プログラムとして実践いただいているモロッコの2校に対し、あらためて感謝と敬意を表します。
注釈
(1) 以下の記事をご参照下さい。
・立命館守山中高サイト「モロッコ王国の2校と教育交流MOUを締結」
https://www.mrc.ritsumei.ac.jp/2026/01/29/post-238887/
・立命館守山中高サイト「モロッコの高校に探究=TANKYUを“輸出”しました」
https://www.mrc.ritsumei.ac.jp/2026/02/04/post-241678/