高校 Global Leadership Programケニア・イノベーション研修を実施

2023.9.12

 2023年7月31日~8月12日、立命館学園の教学理念「平和と民主主義」に寄与するグローバルリーダー育成に向け、本校生徒が世界の現実を知り、自分たちの将来に向けてチャレンジする本校プログラム「Global Leadership Program」を、選抜された4人の高校1年~3年生が研修地アフリカ・ケニアで実施しました。
 アフリカの地を選んだ今回のプログラムは「イノベーション」をテーマに、急速に成長するケニアの地で現代社会の諸問題とその解決策を模索し、今後の世界のあり方を考えることを目的としています。なお、本プログラムは西大和学園高等学校の生徒と共にタイガーモブ株式会社様が企画されるプログラムに合同参加をする形で行いました。
 本校の研修としても初めての実施となるアフリカで多くを経験し、学び、感じた生徒たち。ぜひ今後様々な場で、その内容について発表してもらえればと考えています。

◆参加生徒の振り返りより

  • 今回の研修でケニアの光と影の両面を見て言葉にできない様々な感情を抱いた。また一緒に参加した仲間や出会った大人たちに多くの刺激を受けた。また現地に行ってみると知らなかった世界が広がっていた。その中で私はいつの間にか自分で視野を狭めていたことや与えられた道を歩むことに満足しようとしていることに気がついた。将来が明確で成功することよりも何度も失敗して経験することで強くなれることを知った。また数字を見ることはもちろん大切だけれどそれだけを見ていてはいけないと思った。後悔しないワクワクする人生を生きるために、学んだことを自分なりに考えて物事を考える時の材料にしたり、何かに迷った時に思い出したい。
  • 今私は自分が学びたいことを学べる環境で生かしてもらっているので、今回のこのケニア研修で学んだ先進国との生活環境の差を少しでもうめて途上国の人々の笑顔をつくり、健康寿命をのばす手伝いをしたいと思います。その方法として、一度種を植えると未来にまた芽が出て来て子孫も豊かになる農業支援をしたいと思います。農業をするためには水や土壌などの自然環境が整っていることが重要なので大学ではその勉強をしたいです。
  • 今回、ケニアのイノベーション研修に行く決断をしたことが本当に良かったと感じています。私が今まで知らなかった世界を知ることができました。私が住んでいたところはなんて狭いところだったのだろうと帰ってきてから実感しました。私が今までこういうものだろうと思っていたアフリカの印象が今回でガラリと変わりました。ケニアやアフリカのことについてもっと知りたいなと感じました。私は今回経験したことをこれからもずっと覚えていると思いますし、大切にしたいです。
  • 今回の研修で固定概念だけで判断するのではなく、現地に行かないと分からないことが沢山あることを学んだ。アフリカだからそこに住む人全員が気性が荒いと考えることや、発展途上国だからどこかの国の下請けとして産業をしていると思い込むことはやめておいた方がいい。現地に行くと陽気で明るい人が沢山いたり、現地で新しい事業を始める人も多くいることが知れる。

 
◆研修詳細
|Day1到着!ウェルカムディナー|
 ホテルについて部屋で少し休んだあと、滞在するホテルとは別のホテルのレストランで、現地コーディネートのアクセルアフリカ社さんの面々から歓迎を受けました。司会はケニア人スタッフ・ブライアン、リツモリチームのテーブルにはミリアムさんがついてくれ、英語を使って、スワヒリ語を教わったり、色々な質問を出し合ったりしました。ミリアムさんの人生のこと、私たちの学校のこと、将来のことなどなどなど。将来したいことはなに?と直球で尋ねられて「それは今一番難しい質問だ・・・」と答える場面も。料理もおいしく、ケニアの伝統的な料理「ウガリ」を手でこねて肉などと合わせて食べるやり方を教えてもらって、早速チャレンジしていました。みんなおなかもいっぱいになって、そのあとはホテルでしっかり休みをとりました。

|Day2 廃棄物処理|
 午前はJICA事務所を訪問して、廃棄物処理のお話を伺いました。JICAの概要、ケニアの廃棄物処理の概観、JICAの貢献など多岐にわたる話を、メモを取りながら熱心に伺いました。ケニアには日本のようなゴミ収集の仕組みや処理施設がなく、処分場に持っていかれるということを改めて知りました。
 この説明を受けたとあとで、午後はシカ地区のゴミ処分場を訪問しました。生ごみ、プラスチックごみ、色々なゴミが入り混じる集積場のなかで、ウェイストピッカーの方々がお金になるものを拾ったり、残飯を食べていたりする様子を目にしました。その中には、陽気に英語で話しかけてくれる男性や小さな子どももいました。説明によると、私たちにとって劣悪な環境に思えるこの場所も、JICAの協力により、区画整理や水路整備、ウェイストピッカーの住居などが整った場所であるとのこと。衝撃を受け、言葉にならない思いを持ちつつ、ホテルに帰りました。

|Day3 課題解決企業訪問|
 午前はMr.Greenという、プラスチックをウェイストピッカーから購入し、小さなチップに再生するリサイクル工場を訪問しました。この会社は、ウェイストピッカーから適正な価格で購入しながら、週に1回ティーパーティと呼ばれる食事会を催して彼らのコミュニティー・きずなづくりに貢献しています。その他にも、洗浄に使う水を循環させるなど環境への配慮が行き届いていたり、高い水準の品質管理が行われていたりするため、ユニリーバなどの大手企業がチップを買うなど、世界からも注目を集めているそうです。昨日のゴミ処分場を見た後でこのような取り組みをする会社を訪問させていただいたことで、どのような人々がこの取り組みを支えているのかに興味がわき、生徒たちも、この会社の課題は?新設される工場と現在の工場の違いは?などと時間いっぱいまで質問を投げかけていました。
 午後は、少し気分を変えて、日本人が設立したケニアナッツ社を訪問しました。青年海外協力隊を経てドライフルーツ製造会社を起業し、ケニアナッツでも働いておられる日本人の山本歩さんも付き添ってくださいました。この会社はケニアになじみのなかったナッツを製造する高付加価値農業を導入したパイオニアです。工場の行程を丁寧に見せて頂き、品質管理は、人の目、機械の目で幾重にもチェックしている様子や、ナッツの殻までも無駄にしない環境への配慮を知りました。

|Day4 ビジネスの目で見る|
 午前はJETROナイロビ事務所を訪問し、中川翼さんのお話を伺いました。久しぶりの日本語での説明、なおかつ中川さんは彦根出身、立命館大学の経済学部出身ということで、親近感がわきました。ケニア経済の現況、海外企業の進出における課題、スタートアップ具体例など、具体例も交えながら丁寧にお話しいただき、途中や最後の質問タイムでも、質問が絶えませんでした。
 午後はホテルに戻り、グループワークです。グループごとにそれぞれのテーマで、企業や産業の構造を分析するバリューチェーンを描きます。バリューチェーンは、仕入れから製造販売までのサプライチェーンを考え、それぞれにおけるアクター、課題、解決策を考え、その企業や産業の強み・弱みがどこにあるか考えるものです。プラスチックごみ、電子ごみ、食品ロス、その他に分かれたが、リツモリチームは、プラスチックごみ、電子ごみに入りました。それぞれのチームで積極的にディスカッションを進めていた姿が印象的でした。

|Day5 サファリ|
 ホテルから30分ほどの距離にあるナイロビ国立公園を訪問しました。大阪で言うと、高槻市よりも大きいくらい、高大な土地で、「地平線が見える!」という声が上がっていました。たっぷり4時間ほど周りながら、ライオン、シロサイ、キリン、シマウマ、など、様々な動物に出会い、そのたびごとに歓声をあげていました。この時期に見られる主要な動物は見られて本当にラッキーでした。その後、ホテルに戻り遅めの昼食をとって、ワークを少し続けました。

|Day6 歩く|
 Day6の午前中はショッピングモールに訪れ、スーパーやマサイのお土産物屋をめぐりました。スーパーでは様々な種類がある紅茶やナッツ、クッキーなどを、手に取って比べながら購入し、マサイのお土産物屋では値札のついていない商品を思い思いのやり方で値切っていました。
 午後はアフリカ最大のスラムといわれるキベラスラムを、現地で医療支援に携わる日本人塚原トモさんのガイドで歩いて巡りました。最初に、防犯リスクを最小限にするために、何も持たない、できるかぎり列を短くし、何かあったら走って逃げて隠れる、といったことを再確認したうえで、スラムに住む護衛たちと共に歩き始めます。入口のマーケットエリアでは、トモさんの顔が利くカフェ、服飾店、ヘアサロン、小売店に入り、居住エリアでは、ある家に入らせてもらって直接話を伺いました。外側から見ると、怖い、衛生状態が悪い、貧しいといったイメージがあり、確かにそのような思いを持つことも確かですが、町を自分の脚で歩き、暮らしぶりを目にして、人々と会話することで、彼らも彼らの確かに人生を生きているということを徐々に実感していきました。単なる同情ではなく、それぞれ感じること、考えることがあったようです。振り返りでは、「スラムのなかで循環する閉鎖的な環境が問題のひとつ」「土壌を分析して改善したい」など、これまでの学びを生かした声も聴かれました。

|Day7 中間発表|
 午前中は、グループワークの中間発表を行いました。研修前半の訪問で得られた知識を、バリューチェーンやリーンキャンバスといったビジネスのフレームワークで分析し、グループでまとめたものを発表しました。テーマはグループごとに異なり、プラスチック廃材、電子廃材、フードロス、またインフラ整備や読書など多岐にわたります。ビジネス分析の手法を用いて丁寧に社会や産業を見ることを通して、新たなモノの見方を得流ことができました。今予定されている企業訪問もまた、自分たちのアイデアを確かめるチャンスとなるでしょう。
 午後は、ケニアの農村部で小規模農家の貧困問題解決に取り組む起業家、Alphajiri代表の薬師川智子さんを招いて、ご講演いただきました。第一部は、人生についてのお話でした。「才能とは何か」から始まり、何度失敗しても立ち上がることの大切さについて、数々の実体験をもとにお話下さったことで、自分自身についても問われる時間となりました。第二部は、Alphajiriの活動についてでした。どのようにフードロスをなくし、農家の方々が適正な収入を得られるような仕組みを作るか、ということをお話いただきました。質疑応答では、自分の人生についての深い質問やあるいはビジネスとしてケニアの農業を分析した質問など、興味深い質問が絶えませんでした。
 研修の折り返し地点をすぎ、夕方には小グループでの振り返りを行いました。残り3日間でやりたいこと、やることは?日本の自分とケニアに来てからの自分、比べてみて、変わったところは?ケニアで自分が一番輝いていた瞬間は?などについて、個人で向き合った後で、グループ内シェアをしました。普段の生活とは異なる環境の中で感じたことを言語化することは簡単ではなく、時間のかかることですが、なんとか言葉に紡ぎ出し、互いに耳を傾けあうことで、その環境に立っていることを改めて実感し、残り少ない時間をどう過ごそうかと考えることができました。

|Day8 課題解決企業訪問|
 午前中は、電子廃材の収集、リサイクルを行う会社、WEEE CENTREを見学しました。リツモリチームの中には、日本でも電子廃材を利用したプロジェクトに関わっている生徒もおり、廃材がリサイクルされる工程を見せてもらい、リサイクル工程や資材への価値の付け方など、熱心に質問をしていました。
 午後は、ケニアの環境管理機関である、NEMA(National Environment Management Authority)を訪問しました。ケニア政府のゴミ処理に関する政策や条例、ゴミ処理場の役割などについてお話しいただきました。これまでの研修では、国際機関や課題解決企業などの取り組みを中心に見学したり、分析したりしてきました。NEMAを訪問させてもらったことで、いわゆる「大きな政府」ではありませんが、政府というアクターを加えて考えることになりました。

|Day9 最終発表|
 グループワークの最終発表を行いました。一部、体調不良で参加できない生徒もありましたが、それぞれのグループがこれまでの経験を整理して臨みました。それぞれのグループが、中間発表の時点から、さらに現地の方々にインタビューをしたり、見聞きしたりしたことを踏まえて、具体的になっていたことが印象的でした。繰り返して表現する場があるからこそ、その前後で自分から情報をゲットするチャンスを活かすことができていました。
 その後のファイナルディナーは、ケニアでの最終夜ということで、ローカル料理のニャマチョマ(焼肉)を食べました。ここでお別れとなる、アクセルアフリカさんのケニア人スタッフの皆さんからの挨拶もあり、別れを惜しみました。

|Day10 最終日|
 いよいよ最終日。午前中はプログラム全体の振り返りを行いました。振り返りは、まず個人ジャーナリングでそれぞれ思いを書き出した後、全体で一人一人スピーチをしました。この研修を支えてくださった皆さんへの感謝の言葉、日本の日常の中でこの経験を活かしたいといった前向きな言葉が多く聞かれました。10日間に渡る研修中には様々な喜び、衝撃や困難もありましたが、なかなかできない経験をすることができたと口々に語ってくれました。なかなかすぐに言葉にできないモヤモヤもありますが、日本に帰ってから、時々に振り返りながら言葉にして、自分の身体に落とし込んで行ってほしいと思います。