人はどういう学び方をする時に最もよく学べるのでしょうか?

アメリカ国立訓練研究所(National Training Laboratories Institute)の研究によると、学習方法と学習定着率の関係は「ラーニングピラミッド」(学びのピラミッド)で表すことができるそうです(1)。本稿では図示できないため、以下項目を示します。

・講義(話を聞く)5%
・読書 10%
・視聴覚(映像を見る)20%
・デモンストレーション(誰かの実演を見る)30%
・グループ討論 50%
・自ら体験する 75%
・他の人に教える 90%

ただし、この研究には様々な批判もあるようです(2)。確かに、各段階が5〜10%刻みできれい区別されるのは出来すぎですし、「読書」を学習定着率が低いものとして位置付けているのも違和感があります。とはいえ、個人的に、体感的に納得できるところが多いので、おおよその目安として承認した上で、話を先に進めます。

最近、「ホワイトボード学習法」として、受験生が小さなホワイトボードを購入し、学んだ内容を整理して書き出しながら誰かに説明するスタイルで学習すると、理解が深まり知識が定着するとよく言われます(3)。その意味では、「他の人に教える」学習法はまさに理にかなっているのでしょう。

さて、この学びのピラミッドの7段階は、実は大きく二つに分類することができます。すなわち、学習定着率が低いとされる4項目「講義(を聞く)」「読書」「視聴覚(映像を見る)」「デモンストレーション(誰かの実演を見る)」はインプット(input)、定着率が高いとされる3項目「グループ討論」「自ら体験する」「他の人に教える」はアウトプット(output)と言えます。

日本の学校教育では「授業では先生の話を聞くもの」(=インプット)という傾向が強い(強かった)と言えるでしょう。本校では、当然インプットする学びも大切にしますが、生徒同士で話し合ったり、自分が実際にやってみたり、友達に教え合ったり、アウトプットする学びを重視しています。

例えば、中学3年生は7月上旬、全員が3日間のジュニアインターンシップに取り組みました。これは、体験したい事業所を決め、電話をかけて目的を説明し、受け入れの了承を得るところまでを自分自身の手で取り組みました。そして、3日間の職業体験を行い、毎日の感想をClassiアンケートで報告し、学んだことを文章化しましたが、これらはまさにアウトプットの学びであったと言えます。

また、高校では、東京で開催されたアプリ&ビジネス開発コンテスト「テクノベーションガールズ 日本公式ピッチ大会2024」において、高校3年生女子4名のチームが、全国80チームの中から、上位5チームに選出されるという快挙を達成しました。本校の生徒チームは、都市部に集中してしまう訪日外国人旅行客と、生きた外国語を使いたい地方の高校生をマッチングするアプリを開発。そのために、京都市内で外国人観光客相手にニーズを調査し、協力企業探しでは断られながらねばり強く活動する等、まさにアウトプット体験の連続でした。

しかし、生徒の中にはアウトプットが苦手な人もいるでしょう。何を隠そう、私自身、中高生時代はアウトプットが苦手で、人前で何かを発表することが苦痛でなりませんでした。でも、大学入学後、いろいろな人との出会い、様々な活動への参加を通じて、アウトプットを体験し、その面白さがわかってきた次第です。少なくとも社会に出れば、アウトプットしなければならない局面がやってきます。まずは、文章を書いて、発信することからでもかまいません。少しずつアウトプットの学びを体験して欲しいものです。

この夏、中学生・高校生のみなさんには、読書や講演を聞く等インプットの学びとともに、ボランティアやフィールドワーク等を通じたアウトプットの学びに大いにチャレンジすることを期待しています。

 

※ この記事は、7月19日終業式での校長講話を再構成したものです。

(1)「キャリア教育ラボ」
https://career-ed-lab.mynavi.jp/career-column/707/

(2)「図書館に関する情報ポータル」
https://current.ndl.go.jp/car/25242

(3)「中学受験ナビ」
https://katekyo.mynavi.jp/juken/14734#i-4