「立命館学園歌作曲者のお孫さんにあたる音楽家のクラシックコンサートに行ったんです。素晴らしい演奏に感動しました。」

昨年のいつ頃だったか、現高校3年生PTA役員の方とお話しした際に伺った話です。その時は、「学園歌の作曲者って、誰だったかな?」と思いつつ、「そうなんですか!すごいですね」と反応しただけで終わったのですが、私自身おそらく300回以上は聞いたり歌ったりしてきた立命館学園歌(立命館大学校歌)です。そのお話は強く印象に残りました。

話は変わり、昨年10月21日、本校を会場に、立命館の創始者西園寺公望、創立者中川小十郎をテーマに立命館附属校社会科授業公開研究会が開催されました。その際、参加されていた立命館史資料センター課長とお話する中で、ふと上記のエピソードを思い出し、学園歌の話題になりました。

史資料センターは立命館の歴史に関する文書や写真等の資料収集・保存を行っており、課長から「実は、校歌を収録した最初のレコードを、以前オークションを通じて入手できたのです」とのお話を伺いました。そのレコードは、1931年(昭和6年)制作で作曲者が自ら指揮する貴重なものとのことでした(1)。そして、課長から、「そのお孫さんにあたる方について詳しい情報を教えて下さい」との依頼を受けました。

そこで、高校3年生のPTA役員の方に連絡を取り、京都市内在住でその音楽家を支援されている方をご紹介いただき、連絡をとってみました。

すると偶然にも、その方自身が立命館大学大学院でMBAを取得され、しかもお子さんが立命館小中高を卒業されている「立命館ファミリー」であることがわかり、早速、その音楽家と連絡をとっていただくことになりました……。

 

さて、その音楽家とは、チェリストの水谷川優子さん(2)で、学園歌を作曲された近衛秀麿公(3)の孫にあたる方です。あらためて調べたところ、水谷川さんは現在ドイツ在住で、世界を舞台に活躍されていることを知りました。さらに、水谷川さんは、バイオリニスト高嶋ちさ子さんの学生時代の「大親友」としてテレビ番組でも何度か紹介されていることもわかりました(4)。番組アーカイブを拝見しましたが、「やんちゃ」な高嶋さんと「お嬢様」水谷川さんとのかけあいが最高に面白いものでした。

そして、今年1月、ついに、京都公演の翌日に水谷川さんが立命館大学衣笠キャンパスを訪問する機会を実現することができました。当日は、近衛秀麿公の指揮により録音された学園歌の幻の音源を水谷川優子さんがじっくりと聴き入り、当時のレコードと楽譜の現物を手に取りながら、大学史資料センター関係者との懇談が行われました(5)。

こうして実現した、学園歌作曲者の子孫と立命館大学との94年ぶりの「歴史的邂逅」に、偶然の経緯とは言え、微力ながら寄与できたことが喜ばしい限りです。

創始155年、創立125周年を迎える今年、立命館学園と水谷川優子さんとの絆がよりいっそう深まることを願っています(6)。

 

注釈

(1) 立命館史資料センターサイト
https://www.ritsumei.ac.jp/archives/column/article.html/?id=65

(2) 水谷川優子オフィシャルサイト
https://yuko-miyagawa.com

(3) 近衛秀麿は、日本の指揮者・作曲家、正三位勲三等、元子爵、元貴族院議員。近衛文麿(政治家・元内閣総理大臣)の異母兄。

(4) テレ朝POST
https://post.tv-asahi.co.jp/post-367282/

(5)衣笠キャンパスご訪問の様子は、水谷川優子氏のfacebookリール動画で紹介されています。https://www.facebook.com/reel/609722655012666

(6) 1931年収録の幻の音源は、立命館史資料センターサイト「学園歌集・音源」でお聞き下さい。
https://www.ritsumei.ac.jp/archives/audio-archive/