5月末、立命館大学のサイトに次の記事が掲載されました。
「2026年度春の国家公務員総合職試験の最終合格者が人事院より発表され、立命館大学は60人が合格。合格者数で全国8位、西日本の私立大学で1位となりました。」(1)

国家公務員総合職は、中央省庁で国の政策立案を担う、いわゆる「キャリア官僚」への入口です。志願者は全国のトップレベルの大学生たち。上記の通り、今年度の春試験で立命館大学は私立大学では早稲田・中央・慶應に次ぐ全国4位、西日本では1位となったわけですが、本校卒業生1名がその中に含まれていることが法人の会議を通じて判明しました(その会議の席で、私は校長としてドヤ顔に見えたことでしょう(笑))。ただ、「その卒業生は誰なんだろう」と気になっていたところでした。

そうしたある日、なんとその「1名」が母校を訪問し、校長室に挨拶に来てくれたのです!しかも、「厚生労働省内々定」というお土産を持って。

その「1名」とは、立命館大学法学部4回生の前田穂乃花さんです。

前田さんは高校3年生の時、「若者の投票率の低さ」という社会課題に正面から向き合いました。10代・20代の投票率が60代の半分以下にとどまるというデータを出発点に、「若者が主体となる社会をどうつくるか」を自らの問いとして設定。立命館大学の「みらいゼミ」に高校生として応募し、大学生を巻き込みながら政治参画ワークショップを主催しました。さらに、甲賀市の若者政策コンテストでは「伝統継承賞」を受賞し、高3グローバルAP成果報告会ではファイナリストにも選ばれました。

最難関試験に合格し、しかも厚生労働省への内々定まで勝ち取った前田さんに、その理由を尋ねてみました。

「探究の記憶しかないですね、本当に。勉強したって言ったら。」
大学入学後も、彼女は動き続けました。2回生で行政書士試験に一発合格し、3回生から国家公務員総合職の勉強を本格的に開始。その一方で、離島の地域おこしプロジェクトへの参加、万博に行けない子どもたちを引率するボランティア、小学生の放課後学習を支えるアルバイトと、社会との接点を絶やしませんでした。

官庁訪問の面接で心がけたのは、テクニックではなく「言葉のキャッチボール」だったと言います。「面接というより、会話しに行ったみたいな。笑顔で思ったことをちゃんとはっきり言うことをめちゃくちゃ意識した」。物怖じしない姿勢の源は、高校時代に前原誠司衆議院議員へ直接アポを取りインタビューを実行した経験、探究の発表で何度も鍛えられた対話の力にあったと語ってくれました。

厚生労働省を選んだ理由を聞くと、「国民の生活の基盤を支えたいという軸で回った」と、迷いのない言葉が返ってきました。その言葉に、高校時代から一本筋の通った志を感じました。

校長室に一緒に来た、当時の主任や担任と彼女の高校時代の活動を振り返りながら、ある教員がぽつりと言いました。「あれの4年後やな」と。甲賀市のコンテストに挑んでいた高校生が、4年後に国の政策を担う場所へ。感慨深い言葉でした。

「探究の記憶しかない」。
その言葉は、単なる高校時代の思い出話ではありません。自分で問いを立て、人と出会い、社会に働きかけ、何度も言葉にして伝えてきた経験が、4年後の進路選択と面接の場で、確かな力として立ち上がっていたのだと思います。

前田さん、この度は本当におめでとうございます。
常識に囚われず、自由な発想で社会に希望をもたらすGameChangerとして、これからの日本を支えていってくれることを心から期待しています。

注釈
(1) 立命館大学サイト「NEWS & TOPICS」
https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=4479