歓迎の歌声と笑顔に包まれた会場、国境を越えてすぐに打ち解け合う若者たちの姿──。7月6日、ケニアの高校生24名が来校し、本校の中高生との交流イベントを実施しました。

今回の交流は、一般財団法人日本国際協力センター(JICE)が実施する「Japan-Africa Youth Program」の一環として実現したものです。このプログラムは、昨年横浜で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)を契機に、アフリカの次世代を担う若者と日本の若者との相互理解を深めることを目的としています。

7月2日に滋賀県庁表敬訪問、近江神宮見学の実施を経て来校されたので、ケニアの高校生はバディ役の本校生徒とはすでに知り合いです。最初は少し緊張した表情も見られましたが、自己紹介や質問を交わすうちに、会場のあちこちで笑顔が広がっていきます。特に日本のアニメの話題になると一気に距離が縮まり、生徒たちは国を越えて共通の話題を楽しんでいました。歓迎セレモニーでは中学1年の英語クラス生徒も合流し、挨拶や歌、質問タイムで盛り上がりました。その後、高校生との授業交流、昼食交流会を行いました。

今回の交流を終え、参加した生徒は次のように語っています。。
「海外のことに興味を持つきっかけになり人生が変わったような気がします。この経験を活かしていけるように日々邁進します。ケニアの子達みんなサイコーだった!! 楽しい時間をありがとう!」(高校1年)
「歌や踊りを通して私たちと交流してくれてありがとうございました。英語が深く理解出来なくても歌などを通して交流できたことがすごくうれしかったです。まだ英語力がないので、英語が話せるようになれるように頑張ります!今回は本当に楽しかったです!」(中学1年)

 

さて、歓迎会の挨拶でも申し上げたのですが、私は、アフリカ、特にケニアという国について以前から関心を持っていました。そのきっかけは、数年前の、アフリカビジネスの専門家が書いた『超加速経済アフリカ LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図』(1)という本との出合いにあります。そこには「LEAPFROG(リープフロッグ)=カエル跳び」という現象が語られていました。

ビジネスやテクノロジーの分野では、新興国が既存の古い技術やインフラ整備の段階を経ることなく、一足飛びに最新技術へ到達し、先進国を追い抜くような急速な発展が見られます。まさにアフリカ・ケニアは、その典型例の一つです。私たちは、ともすると「先進国」「途上国」という固定的な見方で世界を捉えてしまいがちです。しかし、テクノロジーや社会の変化は、必ずしも一方向に進むものではありません。むしろ、これまでの常識を飛び越えて、新しい仕組みを生み出す力が、世界のさまざまな地域から生まれています。

たとえば、金融・決済について、ケニアでは銀行口座を持たない人が多い一方で、スマホを使ったモバイル送金サービス「M-PESA(エムペサ)」が成人の9割以上に普及しているそうです。銀行の支店網や固定電話といった従来型のインフラを十分に整える前に、モバイル技術によって一気に新しい社会システムへと移行したわけです。一方、日本ではいまだに現金決済が根強く残り、キャッシュレス化をどう進めるかが議論されています。私たちが「これからどうするか」と考えていることが、ケニアではすでに日常になっているのです。

さらに、アフリカには圧倒的に若者が多いという特徴があります。0歳から順に並べて中間となる人々の年齢(中位年齢)は、日本の48.4歳に対してアフリカ全土では19.4歳だそうです(2020年のデータ)。日本をはじめ、少子高齢化がすすむ先進国に対し、アフリカは驚異的なポテンシャルを秘めているのです。これからの世界を考えるとき、私たちは欧米や東アジアだけを見ていては不十分です。若い世代が多く、新しい技術や価値観を柔軟に取り入れていくアフリカは、まさに世界が注目する地域の一つになっているのです。

この本では、アフリカ大陸の中では、ケニアをはじめ南アフリカ、ナイジェリア、エジプトの4ヶ国が今後注目すべき主要国として紹介されていました。日本の大学や教育機関にとっても、アフリカとのつながりはますます重要になっています。例えば、立命館アジア太平洋大学(APU)は、日本で最も多くのアフリカ出身学生が在学している大学として、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)に大学として参加し、「多文化共生と日本社会の変革─アフリカ出身の高度人材が日本社会にもたらす価値─」というテーマでシンポジウムを開催しました。(2)

ケニアの高校生との交流は、世界の広さと、未来の可能性を実感する貴重な機会となりました。これからの時代に求められるのは、既存の枠組みにとらわれず、新しい発想で社会を切り拓いていく力です。生徒の皆さんも、この出会いをきっかけに世界へ視野を広げ、自分自身の未来に向けた「跳躍」を考えてほしいと願っています。

注釈
(1) 椿進『超加速経済アフリカ LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図』(東洋経済新報社、2021年)
(2) 立命館アジア太平洋大学サイト
https://www.apu.ac.jp/home/news/article/?storyid=3609