教員を対象とした教育研究会で、高校生がグループの司会を務め、現職教員とともに学校教育のあり方を語り合う──。
8月21日(金)、ピアザ淡海で開催された第58回滋賀県私学教育研究集会において、おそらく同研究集会史上初めてとなる光景が生まれました。

今回の研究集会には、6つの分科会にあわせて滋賀県私学450名の現職教員が参加。その中で、分科会「教育活動における子どもの権利」には50名を超える参加者が集いました。本分科会は、立命館守山高校の水野教諭と近江兄弟社高校の廣井教諭という、両校の生徒部主任による共同企画であり、両校の生徒会執行部メンバー13名も運営・進行に携わりました。

第一部では、水野教諭による「子どもの権利条約」と、その理念を国内法として具体化する「こども基本法」についてのミニインプットに続き、両校の生徒がそれぞれの実践を発表しました。

本校からは、まずルールメイキング委員会委員長の田邉友紀奈さん(2年)が登壇。2023年7月に有志活動として発足して以来、2024年2月の生徒総会で正式な委員会となり、全校対話会を経て新校則の施行に至るまでの歩みを報告しました。

ルールメイキング委員会は、まず「子どもの権利条約」を学ぶことから活動を始めました。その後、教員へのインタビュー、全校生徒からの意見集約、生徒総会での校則対話会を経て、「身だしなみ」の自由化をはじめとする新しい校則を昨年6月に施行しました。施行から1年を迎えた今年6月には生徒アンケートを実施(回答率75%)、「過ごしやすくなった」と答えた生徒が7割に達した一方で、「困りごとや不満がある」とする声も4割あったとのこと。田邉さんは、アクセサリーの落下やマナーに関する課題など、個人の意識によって改善できることが多いと指摘し、互いを尊重する姿勢の大切さを訴えました。

続いて、生徒会長の細岡大起さん(3年)が発表しました。従来は五役を中心に運営されていた生徒会組織を、役員会・各種委員会・各局へと再編したこと、代議員会や生徒総会を通じた意思決定のルールを新たに整備したことを報告。また、オープンキャンパスでの生徒による模擬授業や共同実施企画、より良い授業について教員と語り合う「臨時委員会」、PTA・執行部教員と生徒会役員との定期懇談会についても紹介しました。あわせて、学校の意思決定プロセスに生徒代表が同席できていない現状に触れ、生徒参画の実現に向けた思いを力強く語りました。

近江兄弟社高校の生徒会代表からは、生理用品の設置に向けた企業への相談やコスト検証の取り組み、校則の背景を探るための教員インタビュー、体温調節を目的としたポロシャツ・短パン導入の提案が今年4月に実現した経緯、その後の運用上の課題について報告がありました。

第二部のワークショップ「ゆずれる? ゆずれない?」では、教員と生徒が同じ机を囲み、学校生活に関わる10のテーマについて対話しました。

テーマは、頭髪・服装、学校行事、スマートフォンの扱い、授業の進め方、教室環境、放課後・休み時間の過ごし方、校則見直しの手続き、部活動、学校からのSNS発信、遅刻・提出物指導です。それぞれについて、「生徒に委ねられること」なのか、「教員が責任をもって判断すべきこと」なのか、各自が意見と理由を出し合いながら仕分けを行いました。

グループによっては、頭髪については「生徒に委ねる」で一致する一方、制服のあり方については意見が分かれる場面がありました。また、スマートフォンについても、「学校にいる時間だけは使わない時間を過ごしてほしい」という意見と、「生徒が自己管理の仕方を学ぶ機会にすべきだ」という意見が出されるなど、教員同士の間でも考え方の違いが見られました。その後、各グループでは、意見が最も分かれたテーマを一つ選び、なぜズレが生まれたのか、どのような工夫があれば互いに納得できる解に近づけるのかについて、率直な対話が重ねられました。

生徒が自分の頭で考え、判断し、行動できる人になる──。これは、本校が生徒に期待するGame Changerの具体的な姿の一つです。

帝国データバンクが企業を対象として行ったアンケート調査(2026年)によると、「将来若手に身につけてほしい姿勢・行動」として最も多く挙げられたのは、「主体性・積極性がある(自ら考えて行動できる)」で、68.4%にのぼっています。2位の「責任感がある」34.4%を大きく上回る結果です(1)。

社会が若い世代に求めている力は、単に指示を正確に実行する力ではありません。自分で考え、周囲と対話し、よりよい解を探りながら行動していく力です。

今回の分科会で、生徒たちは単なる発表者ではありませんでした。教員と対等な立場で意見を述べ合う対話の当事者であり、会そのものを動かす運営者でもありました。その意味で、今回の取り組みは滋賀県私学教育研究集会の歴史における新たな一歩を刻むとともに、これからの学校教育のあり方を考えるうえで、大きな示唆を与えてくれるものでした。

こうした機会を、一度きりの特別な場に終わらせるのではなく、学校教育の仕組みとしてさらに広げていきたいと思います。

注釈
(1) 帝国データバンク「若手に身につけてほしい姿勢・行動」に関する調査
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260521-young-workers/