9月12日〜13日、本校・守山市民ホールを会場に第21回あすなろ祭(文化祭)が開催されました。今年のテーマは「無限」。「挑戦の先にある無限大に広がる可能性」「挑戦を恐れない無限への希望」を表しています。中学1年生の琵琶湖学習発表から高校3年生の市民ホールでの演劇、各クラスプロジェクトや文化系クラブの発表・展示、生徒会企画、有志発表、PTA出店、そして後夜祭に至るまで、リツモリの「無限」の可能性を実感させてくれた2日間でした。

今回は、数々の企画の中から私が審査員として関わった、中学2年生の学年プロジェクトを紹介します。

中2の学年テーマは、「正義の反対は、相手の正義」。きっかけは、社会科教員から「平和教育というと、すぐに戦争が思い浮かぶが、最近はもっと広い視点で捉えられるのでは」という提案があったことがきっかけだったそうです。そこに、担当教員のひとりが「正義の反対は、相手の正義、という言葉もありますね」と加え、企画の骨格が定まりました。実はこの言葉、アンパンマンの原作者・やなせたかしさん「逆転しない正義」としても知られています(1)。このキーワードをもとに、各クラスで生徒たち自身が話し合いの中から題材を見つけていったといいます。

各クラスの題材は、いずれも「正義」が対立する現実の題材ばかりです。

1組:AI─使用する or 使用しない
2組:ウクライナ・ロシア戦争─ウクライナ側 or ロシア側
3組:イギリスのシリア難民─受け入れる or 受け入れない
4組:女人禁制の祇園祭─伝統文化を守る or 多様性を取り入れる

演出の工夫も見事でした。4組は同じ舞台セットのまま、伝統を守る立場と新しい文化を受け入れる立場を演じ分け、3組はお客さんに90度向きを変えてもらう仕掛け、1組と2組はお客さんが教室を順に移動しながら鑑賞するという構成。中には、教室の仕組みを利用して裏から人が現れる場面もありました。

各クラスでは最後にシール投票を行い、来場者に判定してもらう時間を設けました。ねらいは、はっきり白黒つけることではなく、「お客さんにモヤモヤしてもらう」こと。イギリスの難民受け入れは、国益と人道支援のはざまで、最もモヤモヤが大きかったといいます。祇園祭の女人禁制も、先日世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ指数2026年版」で日本の順位が145カ国中117位だった現実と重なります(2)。

また、当日は特別ゲストとして、立命館大学国際平和ミュージアム亀田直彦課長が来校され、「正義の反対を非道と決めつけず、対立点を劇で表現する取り組みは良い視点ですね」とお褒めの言葉をいただきました。

今回、順位を出すのではなく、各クラスを評価する言葉で授賞するというハードルの高い審査任務が与えられた私と保木副校長で考え抜いた結果、各クラスには以下の賞を授与しました。

1組:AIとの「つきAI(あい)方」を考えさせられたで賞
2組:「なぜ学ぶのか」みんなの疑問を解く「ピース」になったで賞
3組:国益?人道支援?「ゆれる思い」が伝わったで賞
4組:「守りたいけど守れない」身近な悩みによく気づいたで賞

生徒の振り返りにも、この企画の手応えが表れています。

「立て看板づくりで意見がぶつかることもあったが、最終的には良い出来のものができた。(今後も)お互いの意見を尊重して過ごしていきたい」
「本番ぎりぎりまで台詞を覚えていない不安もあったが、本番では上手くいったし、いろんなお客さんに伝えられて良かった」
「準備期間は、普段見られないような姿を見ることができたり、仲の良い人ともそうでない人とも協力し合えたのが嬉しかった」

この企画の裏には、学年教員からの一つのメッセージが込められています。中学2年生という時期は、生徒同士の対立が起きやすい時期でもあります。そこで、「相手はどう考えているのか」「自分とは違う意見にも、相手なりの理由がある」ということに、しっかりと思い至ってほしい。同意はできなくても、理解はできる。その先にこそ、平和があるのだということです。

平和とは、遠い世界にあるものではなく、足元にあるもの。中学2年生たちが見せてくれたこの2日間は、「無限」というテーマそのままに、平和のとらえ方もまた無限に広がっていくことを教えてくれました。

 

注釈
(1) 「校長独言31 何のために生まれて 何をして生きるのか」
https://www.mrc.ritsumei.ac.jp/blog-principal/blog_principal-179453/

(2) 「20年目のジェンダーギャップ指数、開く世界との差 経済と政治が低迷」(日本経済新聞サイト記事、2026年9月16日)は、「世界経済フォーラム(WEF)は16日、男女平等の実現度合いを示す『ジェンダーギャップ指数』の2026年版を発表した。日本は調査対象となった145カ国中117位だった。高市早苗氏が女性で初めて首相に就任したが、25年からの上昇はわずか1つ。ジェンダーギャップ指数の公開から20年目にあたるが、低迷が続いている」と報じています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD311RO0R30C26A7000000/